王子様とハナコさんと鼓星
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「あ、あの…やっぱり…こういう事は…手順と言うものが、あると思うんですけど…」
「え?だめだよ。早いに越したことはないよ。気持ちが盛り上がっている時にしないとね」
ガチャと音を立て、目の前のドアが開かれた。全自動で照明が照らし、真白な玄関が目の前に飛び込んで来た。
背中を軽く押されて玄関に足を踏み入れる。
背後でガチャリと鍵を閉める音に、緊張はマックスになる。
エレベーターの中で結婚をする事を決めた後、社長は荷物を持って来ると1度社長室に戻って行った。
その場で5分ほど待ち、そのまま車に乗り込む。15分ほど車を走らせれば、高層マンションの地下駐車場に車を停めた。
車から降りて、エントランスで鍵を開けて中にはいる。広いエレベーターに乗り込み、ドアが開いた階で降りた。
それが何を意味するのか。こらから起こる事。そんな事は分かっていた。
そもそも、車に乗り込み「どこに?」との問いに「俺の家」と言われた瞬間に覚悟は決めたのだ。
それなのに、いざ、部屋に入ると私は怖気付いていた。
最後にしたのは四年前。それまで、異性と身体を重ねることなんて全くなかった。
久しぶりで上手く出来るかなとか、社長に失望されないかとか、電気はきちんと消してくれる人なのか。
そんな事ばかり、考えて車の中で考えていた。
ただ、嬉しいことは数日前にムダ毛の処理をたまたましたことは良かったこと。でも、今日の下着は上下異なるし、朝、身体を引っ掻いた事で傷だらけ。
正直、それを見られるのは恥ずかしい。
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