優しいさよなら


「え・・・や、高山くん、次の駅やん」


慌てる私の手を痛いくらいに握り、高山くんが歩き出した。

改札を抜け、駅を出ると「どっち」と聞かれ右と答える。

わたしの住むマンションは駅から徒歩10分。高山くんはわたしに道案内だけをさせて、手を引いて進んで行く。




何が起きてるの・・・・・・?





「た、高山くん、ウチここだから・・・」


マンションの前に着き、漸くそれだけ口にすると高山くんがわたしに向き直った。人通りが途切れたマンションの前、温かい腕の中に囚われる。


高山くんの匂い。


高山くんの硬い胸。



「た、高山くん・・・?」




「・・・・・・淋しかったらオレに縋れよ」



「何言うて・・・・・・」



「オレも淋しいよ、辛いよ、誰かに縋りたいよ・・・」



わたしを抱き締める腕に力が入れられた。



痛いよ。
身体も、心も。




高山くんも淋しい?
傍に佐喜子さんがいなくて。


その淋しさはわたしが埋めてあげられる?

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