優しいさよなら
曖昧に笑う。
佐喜子さんのデスクはわたしの隣になった。といっても数日間だけれど。
佐喜子さんが加わり、わたしの異動が伝えられたあとでも、業務はいつもと同じように進んでいく。
狡いわたしはずっと高山くんを避け続けた。
もちろん、スマホの着信にも出ず、メールも、メッセージも読まなかった。個人的な話は一切せず、そのまま異動した。
高山くんのもの問いたげな顔がだんだん怒りを帯びてくるのが分かったけれど、巧妙に避けた。
そうしないと、高山くんと2人っきりになってしまうと、叫び出してしまいそうで怖かったから。
「未読スルーは酷くね?」
営業部に異動したわたしは暫く佐橋と組むように言われた。一緒に取引先に向かう車の中で佐橋がわたしを責める。
「何が?」
「高山の連絡、全部無視してるんやて?アイツ珍しく怒ってたで」
「・・・既読スルーの方がマシ?」
「あのなー・・・スルーが問題なんだろうが!」
「・・・話すことないし会いたくないし」