優しいさよなら
「ならそう言うてやれよ、無視するよりマシだ。ほら、今メッセージだけでも送ってやれ。付き合ってる女に理由も分からず連絡取れへんとかキッツイわ」
「・・・・・・佐橋、わたしたちのこと気付いてた?」
「何となくな、高山の様子で確信になったけど」
隠しきれてなかった。
「誰にも言わないで」
佐橋が大きなため息をつく。
「・・・帰り、話聞いてやる。駅近のカフェで待ってろ」
「・・・・・・」
「絶対来いよ、来おへんかったら地獄の底まで追い込みかけるぞ」
「借金取りか」
「心配してんだ、アホ」
高山くんが怒るのは、わたしに口止めを念押しできてないからだろうか。
何にも言う気ないし、佐喜子さんとの仲を邪魔するつもりもない。ほっといてくれたらいいのだ。
元に戻るだけ。
仕事で顔を合わすことも滅多にない。
仕事を終え、佐橋のことなど無視して帰ろうとしたら、お見通しだったようで待ってろよ、でないと家まで押しかけるぞと脅された。