優しいさよなら


仕方なしにカフェに入り、佐橋を待つ。手持ち無沙汰なのでスマホを出してメッセージの画面を呼び出した。


いっぱいの未読。


覚悟を決めて読む。




『異動の話なんて聞いてない』
内緒にしてたからね。


『何で無視するの?』
話したくなかったから。


『今、お前の家。帰ってこないつもり?』
佐喜子さんが帰って来た日から大学時代の友達の家に居候してたから。


『会いたい』
『会って話したい』
『会いたい、会いたい、会いたい』


テーブルにぱたり、ぱたり、小さな水溜まりができる。


やめて。
もういいやん。


取り敢えずのカノジョなんてほっといて幸せになってよ。


淋しさを埋めるためだけに抱いたわたしなんて簡単に捨ててくれていいよ。



「今更既読?泣くほど反省してるわけ?」

後ろからかけられた冷えた声に振り向くと、初めて見る怒った様子の高山くんがいる。


驚いて声も出ないわたしの腕を掴み、カフェから連れ出された。
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