優しいさよなら
大好きだから愛しさがつのる
佐喜子と付き合い始めたのは大学2年の終わり。
同じ大学、同じサークルで3回生から選択したいと思っていたゼミに佐喜子が所属していて、色々と話を聞いているうちにいつの間にかそうなった。
春からは社会人になった佐喜子。
気楽な学生だったオレと、働き始めて忙しくしていた佐喜子と、すれ違いながらも危なげなく繋がっていた。
佐喜子が仕事に慣れ始めた社会人2年目のときには、オレが就活で忙しくなった。
佐喜子から面白いし働き易い会社だと聞いていたので、迷うことなく「ササクラ酒造」も候補に入れた。
内定を貰い、卒論を仕上げ、残りの学生生活を楽しんでいたオレは、佐喜子との間に僅かに生じ始めていた不協和音に気付かなかった。
きっと年下の学生なんか頼りなかったのだろう。
優しい佐喜子はオレになかなか言い出せなかったらしい。
会社に気になる男がいること。
オレが社会人になって、佐喜子の変化にやっと気付いた。
「ごめん、基。好きな人ができた」
たまたま2人きりになった会議室で切り出される。