優しいさよなら
入社3年目、相変わらずの千紗との関係をどうにかしなければと思うものの、拒絶されたとき同じ職場で気まずくなるのではと思い、なかなか強気に出られないオレははっきりいってヘタレだ。
関係が変わったのは去年の同期の飲み会から。
カノジョにフラれて荒れ気味の佐橋に絡まれていた千紗を助けると、佐橋の気持ちがわかるから許すと言う。
好きなヤツがいる?
しかも相手には彼女がいる?
なんだよ、それ。
相手が幸せならいいなんて笑うな。
オレはお前が他の男と幸せそうにしていても笑えない。
帰りの電車の中、堪えきれなかったのか俯いて涙がこぼれ落ちないように我慢する千紗を見て、オレの理性の針が振り切れた。
弱った千紗につけ込んで、自分のものにして、卑怯な男に成り下がった。
千紗の想いに気付かない男なんて忘れさせてやる。
必死だったんだ。
千紗と普通に付き合っていると思いたかった。
けれど
やっぱり壁は壊せなかった。