優しいさよなら
佐喜子と入れ替わるように営業部へ異動した千紗。何も聞いてない。問い質そうとしても目も合わさない。話さない。電話もメッセージも全て無視。
好きなヤツがやっぱり忘れられない?
今更?
何度も身体を重ねたのに?
家に帰って気付く。
千紗はいつでもオレと別れられるようにしていたのだと。
オレの部屋に千紗は何一つ自分のものを置いていなかった。
嫌だ。
カッコ悪いと言われてももう一度千紗と話をしたい。
みっともなくても足掻くよ、お前が手に入るなら。
オレはスマホを手に取り、佐橋の番号を呼び出していた。