優しいさよなら
「座れば?」
スーツのジャケットを脱ぎ、外したネクタイと一緒にハンガーにかける高山くんをぼんやり見ていると言われ、ソファーに座る。
キッチンでカチャカチャと音がして、テーブルにコーヒーが置かれた。
「・・・・・・ありがと」
高山くんは何も言わずに床に座りコーヒーを飲む。
沈黙が痛い。
「・・・・・・ごめんなさい」
「何が?」
「異動のこと、黙ってて・・・・・」
高山くんがダンッとマグカップをテーブルに置いた。その乱暴な音にビクンと肩が竦む。
「それだけじゃないよな?なんで連絡も取れなくなる訳?」
責める口調が怖い。
「オレのこと飽きたんならはっきりそう言えばいいだろ、最低だ、自然消滅でも狙ってたのかよ」
・・・・・・高山くんに飽きる?
自然消滅・・・?
なんで・・・この人は・・・
気が付くと高山くんに向かってクッションを投げつけていた。
「千紗!」
もう一つ投げつける。