優しいさよなら
突然、フッと身体が軽くなる。
「佐橋、ふざけ過ぎ」
静かな声で咎め、佐橋の身体を離して後ろに投げ捨て、わたしの横に高山くんが座った。
「高村、大丈夫か?」
「ああ、うん。ありがと、助かった」
高山くんがニッコリ笑ってビールの入ったグラスに口をつける。
佐橋を見るとお前ふざけ過ぎだとか言われてみんなに小突かれていた。
「お前も悪い、あんな頭を撫でたりしてやるから」
いや、だってちょっと佐橋に共感してしまったから。
「・・・・・・だってフラれて可哀想やし、気持ちわかるし」
「気持ちわかる?」
不思議そうな瞳を高山くんがわたしに向ける。
「わかるよー、フラれるのは辛いやんか」
「・・・高村、好きなヤツいたの?」
「いや、だからわたしかてお年頃やし。まあ、相手にはカノジョがいて不毛なんやけどね」
報われない恋の相手に何の話をしてんだ、わたしは。馬鹿馬鹿しくて、飲みかけのハイボールを一気ににあおった。