元社長令嬢は御曹司の家政婦
その晩、私は昔の夢を見た。
まだ私が社長令嬢だった......いえ自分が社長令嬢であると自覚もしていなかった小さな頃の夢を。



―――君には無限の可能性があるんだ。
どんな状況でも自分を信じなさい。

―――美妃ちゃん、あなたはとても素晴らしい人間なのよ。
それだけは忘れないで。



ワンピースを着ている小さな私をママが抱き上げて、パパはその横で微笑ましそうにそれを見ている。

そこまで小さな頃の記憶が鮮明にあるわけじゃないけど、パパもママもいつも私を可愛がってくれていた。きっと、生まれた時から出ていく日までずっと。

パパ、ママ......。



なんだか懐かしい夢を見た気がする。
二人とも今頃どうしてるんだろう。

目が覚めた後もしばらくぼんやりしていたけれど、はっとして飛び起きた。

そうだわ!まだパパが残してくれた最後の可能性があった。困ったらパパの昔の知り合いに頼りなさいと言っていたことを思い出すと、早速机の中をあさる。

連絡先は確かここに......、あった!

机にしまいこんであったパパ直筆の手紙には、はっきりと最後の救世主の連絡先が残されていて、私はそれに賭けてみることにした。


パパはきっと私を悪い方向には導かない、そう信じて。



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