元社長令嬢は御曹司の家政婦

・捨てる神あれば拾う神あり

専務室をノックすると、どうぞとすぐに返ってきたので、ドアを開けて中に入る。

部屋に入ってきた私と目が合うと、九条秋人はパソコンから目を離し、椅子から立ち上がった。


「就業時間外にわざわざ呼びつけて申し訳ない」
 
「そう思うなら、最初から呼ばないでください」


整った容姿によく似合うブラックのスーツ、ブラインドの下から夕日が少しだけ入ってくる窓際に立つ姿も様になっている。かっこいいのは分かるけど、私ほどの美女を見てもニコリともしない人間味の無さが気に食わない。

座るように促されたけど、結構ですとそっけなく答える。


「そうか。では早速だが本題に入ろう。
君が我が社に来てから一週間、君の業務態度に苦情が殺到している。この短期間でこれだけの数の苦情がくるなんて、前代未聞だ。
その他総合的観点から、君は我が社に必要ない人材だと判断した。つまり、クビだ」


クビ......?
仁王立ちのまま、私と一定の距離を保った九条秋人の言葉が信じられなくて聞き直してみたけど、一言一句同じ言葉が返ってくる。

クビだ、と。

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