元社長令嬢は御曹司の家政婦

・元社長令嬢の目にも涙?

それからさらに三週間、秋人と暮らし始めて一ヶ月ほどたったある雨の日。春にしては、かなり冷える日の夜だった。


今日はいつもより早く帰る、と朝言っていたわりには、夜八時を過ぎてもまだ帰ってこなくて、ラップをかけた夕ごはんを仕方なく冷蔵庫にしまう。


普段なら帰りが十時を過ぎることなんてしょっちゅうだし、なんなら日付けが変わってから帰ってくることも珍しくないけれど、今日は早く帰れそうだと言っていたのに......。何かあったのかしら?

さっきから電話をかけようとして、やっぱりやめてはまたかけようとして、ずっとそれの繰り返し。早くお風呂に入って、美容タイムに入りたいのに、なんだか気になって何も手につかない。

電話をかけて聞いたらはっきりするんだろうけど、電話なんかかけて私が秋人のことを心配してると勘違いされたら嫌だからそれもできずにいる。だって、私が秋人の帰りを楽しみに待ってる、みたいに思われたら嫌じゃない!


気になるけどどうしようもできない気持ちを持て余しながら待っていると、突然ドアのあいた音がしたので玄関に走る。



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