元社長令嬢は御曹司の家政婦
収納クロークから出してきたわけだから、当然今日揃えたわけではないだろうに、余りにも用意周到すぎない?

あぜんとしていると、秋人は慣れた手つきで猫をベッドの中に入れ、その上から優しく毛布をかける。 


「大人の猫ではないが、ミルクが必要なほどの月齢でもなさそうだからこれで大丈夫だろう。必要なら、離乳食の用意もある。
弱っているようだからあまり刺激は出来ないが、人には慣れているみたいだから世話をする分には問題なさそうだ」

「それは結構なことだけど、何なのよこれは。
昔、猫でも飼ってたの?」

「特に飼っていたことはないが、捨てられていたり迷子になっていた犬や猫を保護していたり、預かっていたことは何度かある」

  
猫を刺激しないように優しく見守っている秋人が予想外過ぎて、返す言葉を失ってしまう。自分も濡れたままだっていうのに、着替えもしないで。

冷たくて何の情もなさそうな秋人が、動物には優しいなんて意外。

いえ、でも......私が勝手に決めつけていただけで、私がどれだけ秋人の持ち物に被害を与えたり失敗しても、決して追い出そうとはしない辺り、情にあついのかしら?
  

もしかしたら、私のことも捨てられた猫を保護するのと同じ感覚で家に置いているのかもしれない。

そう思うと釈然としないけど、今はそんなことより、この猫をどうにかしないと。

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