元社長令嬢は御曹司の家政婦
私と秋人の二人だけの暮らしに猫が加わって、二週間。

猫が来るまではのんびりと出来ていた昼下がり、私はイライラしながら雑巾で廊下を拭いていた。

全く......、何で私がこんなこと。


来たばかりの頃はあんなに弱っていたのが嘘みたいに、猫は元気を取り戻した。

それはいいことだとしても、元気過ぎて家を暴れまわる、指定されたつめどきの場所以外にもつめどきして物を傷つける。それから、トイレのしつけもなっていなくて、トイレ以外の場所で何度も粗相をする。

一刻も早くトイレの場所を覚えさせなければ。
そう決心しながら、廊下をごしごし拭いていると、私のバッグを口に加えた猫がトコトコとこちらに向かって歩いてくる。  


「ちょっと、私のバッグを勝手に動かさないで......、嫌~~~!!!私のバッグで爪どきしないでよ!
どうせやるのなら、秋人の物でやってよ!
もう......ボロボロじゃないっ!これ限定品だから、もう手に入らないのよ!?」


猫がくわえていたバッグを取り上げると、それは傷だらけで。こんなこと猫に言ったって仕方ないのだけれど、絶叫してしまった。

いくらすると思ってるのよ。
家政婦としては破格のお金をもらっているとはいっても、昔のようにそうホイホイと気軽にブランド品を買えないのよ?
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