元社長令嬢は御曹司の家政婦
私が絶叫していても猫は素知らぬ顔、興味なさそうな顔でポテポテと去っていってしまう。
 

もうっ!猫なんて大嫌いよ!
すぐ汚すし、あちこち傷つけるし、自分勝手でわがままで気まぐれで、何回言っても私の言うことを聞きもしない。

早く飼い主が現れないかしら。


イライラしながら掃除を終えて、ぼすん!と乱暴にソファに腰かける。そのまま横になると、床に寝ていた猫がにゃ~と鳴いて、私のお腹の上に飛び乗りそこで丸くなる。


「ちょっと、重いんだけど」


文句を言ってみたけど、気にもしないで目を閉じた猫はそのまま寝入ってしまった。

もう......、これじゃ動けないじゃない。

   
こっちが構いたい時は嫌がる癖に、こうして気まぐれに時々甘えてきて。本当に自分勝手で、猫なんて大嫌い。

粗相ばかりして臭いし汚いし面倒だし、それに......腹の立つことをあげているとキリがないくらいだけど、でも、それでも......。

私のお腹の上で、安心したように丸くなる猫を見ていると、不思議と憎みきれない。


今までは嫌になったら誰かに丸投げすればそれで済んだけど、この猫は私がお世話をしないと生きていけないのよね。私が、いないとダメなのよね......。

色々考えていたけれど、温かい猫のぬくもりで私まで眠くなってきて、そのまま一緒に寝入ってしまった。





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