元社長令嬢は御曹司の家政婦
「申し訳ございませんが、ご希望の条件でご紹介できるところはないかと......。もう少し条件を広げてみてはいかがでしょうか?」

「広げるって?」


すぐにまた作り笑顔を張りつけ、遠慮がちに提案してきた職員に聞き返す。
広げるって、海外勤務とかも考えろってこと?英語は全く話せないけど、それも悪くないかもしれない。


「まず資格やご経験のない方で、最初からこれだけの高収入は難しいので、もう少し落として頂いて、それから職種の方はビルの清掃や、」

「この私がビルの清掃なんて真似できるわけないでしょう!」
  
 
ビルの清掃?
あんなダサい制服を着て、汚れ仕事なんてできるわけない!

職員の言葉の途中で興奮して立ち上がると、困ったようになだめられたけど、結局条件を下げなければ紹介できる仕事はないの一点張りだった。


「もういいわ!使えないひとね!」


私はこれでもだいぶ譲歩してるというのに、これ以上条件を下げてブラック企業に勤めろなんて、とんでもない職員ね。職員から履歴書を乱暴に取り戻すと、怒りに任せて、そのまま事業所を後にした。
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