Dangerous boy
小暮さんも、顔色が悪い。

それはそうだ。

恋人が突然、車に轢かれ重体だなんて。


「尚太君?」

私は長椅子に座る尚太君に、話しかけた。

でも、返事がない。

「尚太君。」

私はもう一度呼びかけたけれど、尚太君はピクリとも動かない。

小暮さんと私は、顔を見合わせた。


「おい、尚太。」

小暮さんが、尚太君の体を揺らす。

「えっ……」

やっと声を出したのに、尚太君はボーっとしたままだ。

「……心ちゃんが、呼んでるぞ。」

「うん……」

そう返事をしたのに、心ここにあらずだ。

小暮さんは私に、頭を振った。

たぶん、話しかけても無駄だと言う事だろう。


でも、私はゆっくりと尚太君の側に歩いて行き、静かに隣に座った。

「心ちゃん?」

「小暮さん、私……尚太君の側にいます。」

そして私は、尚太君の手を握った。

それしか、私ができる事はない。
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