Dangerous boy
他の社員の席とは少し離れていて、高藤部長は社員と二人きりで話したい時も、このスペースを使っていた。

「ハサミかカッター、持って来てくれるか?」

「はい。」

私は自分の席に、コピー用紙10枚を置いてから、ハサミとカッターを持ち、またお客様用スペースに戻って来た。

「部長、ハサミとカッター、一つずつしかないですが、どちらを使いますか?」

「ああ、じゃあカッター貸してくれ。」

「はい。」

私はカッターを部長に渡すと、向かいの席に座った。

そして私は、ハサミでミスプリントしたコピー用紙を、切り始めた。


「なあ、倉本。」

「はい。」

部長も私も、紙を切りながら、放し続ける。

「俺のあの言葉が、心に引っ掛ってるんだったら、一旦忘れろ。」

私は、紙を切る手を止めた。

「こんなミス、少し前のお前でもしないだろ。絶対、俺のせいだ。すまない。」

私がドジだからミスしたのに、何で部長が謝るの?
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