Dangerous boy
定時の6時になり、私は以前からやりたいと思っていた資料を作り始めた。

「お疲れ様。」

同僚の人達が、一人一人帰って行く中で、私だけ黙々とパソコンに向かっている。

最後の同僚が帰った時、私はある事に気づいた。

まだ、高藤部長が残っているのだ。


「部長も、残業ですか?」

「ん?」

何気なく聞いた私に、部長はひょこっと席から顔を出した。

「倉本は、俺が部下を置いて帰る上司に見えるのか?」

それを聞いて、思わず体が後ろに伸びた。

「も、もしかして……私を待っているんですか!?」

「当たり前。他に誰がいる?」


あー、やってしまった。

部長に迷惑をかけないように、気を使っていたのに。


「帰ります。今、帰ります。」

私は慌ててパソコンを閉じた。

「なんだ、残業じゃなかったのか?」

「いえ、残業ですけど……今日まで仕上げなきゃいけないって訳じゃないんで。」
< 35 / 171 >

この作品をシェア

pagetop