Dangerous boy
「嫌いじゃないよ。どうして?」

「あっ、部長……ワイン飲んでいるのに、頼んでいないなぁって思って。」

その時部長は、私を見てクスッと笑った。

「だって、カクテルには合わないでしょ。」

「えっ……」

私の胸の中で、何かが波打つ。

「もしかして……私に合わせてくれたんですか?」

「勿論。」

その時、はっきり胸がドクンッと鳴った。


あまり、期待を持たせないでほしい。

部長程の大人の男性が、こんなカクテルしか飲めない子供の私を相手にするなんて、思えないから。


「それに案外、肉料理とかナッツ類も、ワインに合うんだよ。」

そう言って部長は、私の為に頼んでくれたメニューを、美味しそうに口に入れた。

結局部長の話は、最近仕事どう?とか、1年経って仕事に慣れてきたなとか、他愛のない仕事の話ばかり。

大人の雰囲気に圧倒されて、ありきたりな答えしか、私は返せなかった。
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