副社長と秘密の溺愛オフィス
 相手にして軽くあしらっても怒り、相手にしなければますます怒って面倒ごとを引き起こす。そしてそれは大人になっても変わらなかった。

 いくら問題を指摘したところで、そんなものはどうってことない。俺にとってみれば、ハエがちょっと飛んでいるくらいのものだ。

「アイツのことは放っておけ。まさか、なにか嫌がらせされているのかっ?」

 俺が女豹のようなやつらに色々されているのと同じように、明日香もまた専務の嫌がらせに遭っているのではないだろうか。

「いえ、そういったことはありませんから心配なさらないでください」

 ぶんぶんと頭をふる明日香を見て、ほっとした。ただでさえ、馴れない男の体に馴れない仕事。毎日が緊張の連続だろう。ため息をついたり疲れた顔をしている日が多い。昔のようにはつらつと働く姿はどこにもなかった。

「ちょっと席を外しますね」

 そう言って疲れた顔で部屋を出ていく明日香の背中を見て、心配になる。

 そうだあれがあった――。

 たしか彼女が引き出しにいつも入れていたチョコレートがまだあっはずだ。少しは気分転換になるだろうと思い、自分の座っている彼女のデスクを漁る。
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