副社長と秘密の溺愛オフィス
 翌日。わたしは今か今かと紘也さんの帰りを待っていた。

「迎えに行く」という申し出を断られて、やきもきしながらマンションの部屋でリビングをひとりうろうろしていた。

 何度、スマートフォンを確認しても昨日の深夜にきた「万事OK」というメッセージ以降は、なんの連絡もない。もちろんわたしからは何度もメッセージを送っているが返信がなかった。

「もう、やっぱり無理にでも迎えに行くんだった」

 あの状況をどうやって万事OKにするわけ?

 だんだんと心配が怒りに変わったころ、玄関のドアが開く音がしてわたしは駆けだした。

「何度も連絡してるのに――って、翼?」

 玄関に現れたのは紘也さんと翼だ。

「いったいどうしたの?」

「お、明日香、ただいま!」

 機嫌よくヘラヘラ笑っている紘也さんが支えているのはべろべろに酔っ払った翼だ。
紘也さんも弟の前でわたしを〝明日香〟と呼んでしまう程度には、酔っているようだ。ふたりともお酒は相当強いはずなのに、昼間っからどれだけ飲んだの⁉

「とりあえず、中に入って」

 紘也さんは中身は男だけど、体力はわたしのものだ。男性としては比較的小柄な翼だけれど、酔った男性をいつまでも支えているのはつらいだろう。

 わたしも翼の肩に手を回し、紘也さんとふたりで両脇を抱えた。
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