副社長と秘密の溺愛オフィス

いきなり割れたガラス、そこから犯人をにらみつけている女性を見て、犯人たちは驚いたようだ。

「おい、捕まえろ」

　犯人たちは自らドアのカギを開けて、紘也さんを事務所内に連れてきた。

　羽交い絞めにされた紘也さんは「離せ！」と大暴れしている。

「じっとしろ、おい」

「紘也さん！」

　立ち上がろうとしたわたしの脇腹を犯人が蹴り上げた。

「……っう」

　バタンとその場に倒れたわたしを見て、紘也さんの目が血走る。

「やめろって言ってるだろ！　お前ら誰の指示でこんなこと。後悔することになるぞ」

　紘也さんの怒号に、犯人たちは笑い声をあげた。

「あ～こわいこわい。こんなきれいなお姉さんになら後悔させられたいな」

　げらげらと下品な笑いを続ける犯人たちの足にわたしはおもいっきり噛みついた。

「クソ、コイツっ」

　男が思いっきり足を振り上げた。次に襲ってくるであろう痛みに耐えようと体を縮こませる。

「明日香――！」

　紘也さんの叫び声が聞こえた瞬間、目をつむっていた瞼の裏に激しく閃光が走った。

　な、なにっ⁉　

　次の瞬間、目を開くとわたしの目の前には紘也さんが、両足で男の腹部を蹴り飛ばしている姿があった。

　……どういうこと？