副社長と秘密の溺愛オフィス
「失礼するよ」
バタバタと仕事に追われる昼下がりにノックもなしに部屋にやってきたのは、大乗専務だった。いつもニヤけた顔をしているが、今日は輪をかけてニヤついている。
電話中だった紘也さんは、チラッと視線を彼に向けると眉間に深い皺を寄せる。
その態度から歓迎されていないことはわかっているだろうけれど、まったく意に介さずポケットに手を入れたまま副社長室に入ってきたので、わたしは立ち上がり会釈をした。
そして顔を上げたとき、彼の後ろにいる人物を見て驚いた。
千佳子さん……?
どうして彼女が大乗専務と一緒にいるのだろう。浮んだ質問の答えはすぐにわかった。
電話を終えた紘也さんが、デスクから立ち上がりふたりの前に出た。
「どうして千佳子が一緒なんだ?」
紘也さんも同じことを思ったようだ。
「おいおい、せっかくなのに、お茶も出さないのか。秘書も気が利かないな」
「申し訳ございません。今準備いたします」
慌てて出ていこうとするわたしを紘也さんが止めた。
「話はすぐに終わるから、構わない。要件は?」
「せっかちだな。俺と千佳子さんの結婚の報告に来たんだ」
「えっ⁉」
驚いて思わず声をあげてしまった。いったいどうしてそんなことになったのだろうか。大乗専務はわたしの方をみてニヤッと笑った。
「そんなに驚くことかい? 俺だって甲斐一族だ。つかさ銀行の頭取の娘と結婚したっておかしなことなどないだろう?」
たしかに最初は紘也さんが、千佳子さんのお相手だったときいた。それがわたしと婚約したことで、別の人との結婚話になったのだろう。
バタバタと仕事に追われる昼下がりにノックもなしに部屋にやってきたのは、大乗専務だった。いつもニヤけた顔をしているが、今日は輪をかけてニヤついている。
電話中だった紘也さんは、チラッと視線を彼に向けると眉間に深い皺を寄せる。
その態度から歓迎されていないことはわかっているだろうけれど、まったく意に介さずポケットに手を入れたまま副社長室に入ってきたので、わたしは立ち上がり会釈をした。
そして顔を上げたとき、彼の後ろにいる人物を見て驚いた。
千佳子さん……?
どうして彼女が大乗専務と一緒にいるのだろう。浮んだ質問の答えはすぐにわかった。
電話を終えた紘也さんが、デスクから立ち上がりふたりの前に出た。
「どうして千佳子が一緒なんだ?」
紘也さんも同じことを思ったようだ。
「おいおい、せっかくなのに、お茶も出さないのか。秘書も気が利かないな」
「申し訳ございません。今準備いたします」
慌てて出ていこうとするわたしを紘也さんが止めた。
「話はすぐに終わるから、構わない。要件は?」
「せっかちだな。俺と千佳子さんの結婚の報告に来たんだ」
「えっ⁉」
驚いて思わず声をあげてしまった。いったいどうしてそんなことになったのだろうか。大乗専務はわたしの方をみてニヤッと笑った。
「そんなに驚くことかい? 俺だって甲斐一族だ。つかさ銀行の頭取の娘と結婚したっておかしなことなどないだろう?」
たしかに最初は紘也さんが、千佳子さんのお相手だったときいた。それがわたしと婚約したことで、別の人との結婚話になったのだろう。