副社長と秘密の溺愛オフィス
　でも、よりによってどうして大乗専務なの？

　千佳子さんは、わたしにも優しくしてくれて本当に容姿も心も美しい人だ。なのにどうして大乗専務の元に嫁ぐことになったのだろうか。

「千佳子、本当なのか？」

　紘也さんは専務を無視して、直接千佳子さんに尋ねた。

「……はい」

　それまで俯いていた千佳子さんが顔を上げて、力なく答えた。無理矢理笑顔を浮かべようとしていたけれど、それがかえって痛々しい。

　その様子から、この結婚が彼女にとって不本意であることは明白だった。

「お前はそれでいいのか？」

　紘也さんも、千佳子さんの様子に気がついている。だからこそ、彼女の本心を聞きたかったに違いない。

　しかし千佳子さんが答える前に、大乗専務が代わりとばかりに答えた。

「今更その質問に何か意味があるのか？　千佳子さんと俺の結婚はすでに決まったことだ。外野が口を出すことじゃないだろ？　それともあれか？　今頃になって彼女が惜しくなったのか？　それも仕方ないか。お前の相手は結婚したところでなんのメリットもない一般人だもんな」

　その言葉が瞬時にわたしの心に深く傷を負わす。自分でもわかっていたことなのに、改めて言われるとダメージが大きい。

　大乗専務はこの場にいる皆をバカにするように声を上げて笑った。
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