副社長と秘密の溺愛オフィス
 ……痛いっ。

 ズキンズキンと脈打つような痛みが、全身に走る。

 特に右側の額のあたりの痛みは得にひどかった。

 そういえば、わたし……事故に遭ったんだった。

 うっすらと目を開けると、見慣れない真っ白な天井が目に入る。何度か瞬きすると、はっきりと周りが見えるようになった。

 首だけを動かして誰か周りにいないかと、確認する。すると見慣れない六十代くらいの品の良い女性がベッドの脇で座っている姿が目に入った。

 その女性は目を開いたわたしを見て、ホッとした表情を見せた。

 誰だろう? 事故の相手だろうか?

「よかった! 目が覚めたのね。今お医者様呼びますから」

 枕もとのナースコールのボタンを押して、女性が医師を呼んだ。

 ほどなくして廊下からパタパタと数人の医療スタッフが病室に入ってくるのが見えた。

「失礼します」

 腕をとり脈の確認をして、その後瞼をこじ開けられて、ライトで照らされた。

「これ、何本かわかりますか?」

 五十代ぐらいの眼鏡の医師が、人差し指と中指をたててピースサインを作っている。「二本です」

「けっこうです」

 にっこりと微笑んだ医師の顔を見て、わたしも安心した。
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