副社長と秘密の溺愛オフィス
「先ほどとったCTもレントゲンも異常がみうけられませんでした。全身打撲と額のキズのみです。運がよかったですね」

「はい、ありがとうございます」

 どうやら大事にはいたらなかったようだ。丈夫な身体に感謝しなくては。

「明日一日入院して様子を見ましょう。問題がなければ退院して大丈夫ですよ」

 ベッドサイドにいる初老の女性に医師が説明した。

「ありがとうございます。よかったわね」

「あ、はい」

 見知らぬ女性だったが、本当にわたしの心配をしてくれていたようで彼女もまたほっとした表情を見せていた。

 そこに来て、はっと気がつく。

「うちに電話しなきゃ・・・・・・」

 仕事で帰宅時間が遅くなることはザラにある。そのときはいつも弟の翼に連絡を入れるようにしていた。

 ふたりで暮らすようになって決めた最低限のルールのうちのひとつだ。

 起き上がろうとしたわたしを、女性が止める。

「まだ寝てなきゃダメよ。それにどこに電話するっていうの?」

「え? あの弟に・・・・・・」

 わたしの言葉に女性は怪訝そうな表情を浮かべた。
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