副社長と秘密の溺愛オフィス
 彼から逃げることなどできない。強引でいて、それで甘やかなキスに応えるのに必死になっていたとき、それまでわたしの頭をささえていた彼の大きな手が、うなじを伝い、背中を撫でそしてワンピースのファスナーに手をかけた。

「あっ……」

 咄嗟に身をよじり、それ以上の侵入を止めた。キスが止まり、お互いの目が合う。

「あの、やっぱり恥ずかしくて」

「自分で誘っといて?」

 紘也さんは面白いものでも見るように、わたしをからかった。

「それは、そうなんですけど……」

 乙女心というのは心底複雑なのだと、こんな状況で実感した。彼にすべてを差し出すつもりだ。その気持ちは確かなのに、先に進むのが怖いという思いもある。

「安心すればいい。君の体が綺麗なのは、俺が一番わかってるから」

 そうだった、彼はわたしのすべてを知っているのだ。今さら……と思うけれど、やっぱり緊張してしまう。

「あの、自分で――」

 脱がされるよりは幾分マシな気がしたけれど、即座に拒否された。

「ダメ、俺の楽しみ奪うつもり?」

「そんなつもりじゃないんですけど」

「自分でも脱いでもいいけど、その間俺、君のことずっと見てるけどいい?」

「や、なんてこと……!」

 想像するだけでも恥ずかしくなってしまう。
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