副社長と秘密の溺愛オフィス
「それくらい――一瞬も明日香から目を話したくないってこと。わかって」

「あっ……」

 最後まで言葉を言い終わらないうちに、彼の手がワンピースのファスナーを下げる。抵抗する間も与えられない。

「……んっ」

 ファスナーが降ろされ、素肌があらわになる。紘也さんはその背中を指で、スッとなぞる。

「んっ、あっ!」

 わたしは思わず体をビクンとはねさせた。自分の上げた声に恥ずかしくなり、体温が一気に上がる。

「かわいい声、もっと聞かせて」

 紘也さんが耳元でささやく。熱い吐息交じりの言葉は、わたしの体を震えさせそして、体の芯に火をつけた。今まで感じたことのない体の熱に、不安や羞恥心が溶かされていく。

 ふと、紘也さんの体がわたしから離れる。ほんの一瞬のことなのに、不安になってすがるような目で彼を見た。

「そんな顔するな。お前を置いてどこにもいかないよ。ほら、手」

 差し出された彼の手に、素直に自分の手を重ねる。力強い手がぎゅっとわたしの手を握ると、引っ張ってその場にわたしを立たせた。 

 その反動でワンピースがパサリと床に落ちる。下着だけの姿になって、あわてて体を隠そうとするが、その前に紘
也さんがわたしを抱き上げた。

「きゃぁ! な、なにする」

「何って、最後まだここでやるつもり? 俺はかまわないけど――でも、やっぱりは初めてはベッドの方がよくない?」

 どうやら行先は彼の寝室の様だ。たしかに……紘也さんの言う通り。
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