副社長と秘密の溺愛オフィス
――翌朝。

「おめざめですか? 脈とお熱計りますね」

 可愛らしい看護師さんが、白衣の天使スマイルを浮かべている。腕を取って脈を計っている間もこちらを見ていて、目が合うと恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 ん? わたし、何か恥ずかしがらせるようなことした?

 腑に落ちず、先ほどからの行動を思い返してみるが、理由がわからない。

「あの、どうかしましたか?」

 思い切って尋ねてみたけれど、看護師さんはブンブンと首を左右に振るだけだ。

 変な感じはするが、そこまで気になるようなことではない。

 しかし彼女が握っている自分の腕を見て、そっちの方に大きな違和感を感じてしまう。

 え? わたしの手腫れてる?
 

 確かに全身を打ったけれど、手はそこまで重症ではなかったはずだ。今も痛みはなく感覚も正常だ。
 
 しかし明らかに色が黒く、筋張っている。それにひとまわり、いやそれ以上大きくなっている気がする。

 看護師さんが手を離すと、わたしは自分その手を目の前に持ってきて凝視する。

 明らかに昨日までの自分の手とは違う。しかし握ったり開いたり、自分の思い通りに動く。いろんなものに触れても、しっかりとその感触が伝わってくる。

 ふと自分の顔に手を触れてみた。

 頬を撫でるとザラリとした感覚に、驚きビクッとして手を離してしまった。

「な、何これっ!」

「どうかしましたか!?」

 わたしがいきなり大声を上げたので、看護師さんを驚かせてしまったようだ。

「い、いえ。あの、なんでもありません」

「そうですか、何かありましたらおっしゃってくださいね」

 血圧を計り終わり計器を片付けている彼女に尋ねた。
< 19 / 212 >

この作品をシェア

pagetop