副社長と秘密の溺愛オフィス
第一章
①副社長とわたし
「かしこまりました。では、そのように手配いたします」
副社長室の隣にある個室で電話応対を終えた、わたし、乾明日香(いぬいあすか)は、すぐにパソコンでスケジュールの更新をする。
来週の予定も、すでにいっぱい……と。
ぎっしりと詰まった予定を見て、これ以上のスケジュールの変更がないことを祈る。
わたしの勤める株式会社甲斐建設は国内最大手のゼネコンである。ビルやマンション、鉄道。国内外でありとあらゆるものを作り、その名を世界に轟かせている。関連会社を含む連結従業員数は十万人を超える大企業だ。その本社の秘書課に配属されて五年、副社長の秘書となって三年になる。
辞令は入社二年目だった。グループ秘書から副社長の就任と共に個人秘書に抜擢された。
本来ならば、ベテランの課長クラスが個人秘書を務めるのが今までの習わしだったものの、当時副社長に就任したばかりの甲斐紘也(かいひろや)が『彼女を秘書』にと、言い出したのだ。
わたし自身、分不相応だとは十分理解していた。しかし辞令をはねのけて、仕事を失うようなことはできない事情があった。
わたしの両親は、わたしが大学卒業をする年に、小型飛行機の事故で亡くなった。すでに成人しているとはいえ、突然のことに驚き悲しんだ。
あのときのことを思い出すと、今でも悲しみが身体を駆け巡る。
しかしいつまでも落ち込んでいるわけにはいかなかった。
副社長室の隣にある個室で電話応対を終えた、わたし、乾明日香(いぬいあすか)は、すぐにパソコンでスケジュールの更新をする。
来週の予定も、すでにいっぱい……と。
ぎっしりと詰まった予定を見て、これ以上のスケジュールの変更がないことを祈る。
わたしの勤める株式会社甲斐建設は国内最大手のゼネコンである。ビルやマンション、鉄道。国内外でありとあらゆるものを作り、その名を世界に轟かせている。関連会社を含む連結従業員数は十万人を超える大企業だ。その本社の秘書課に配属されて五年、副社長の秘書となって三年になる。
辞令は入社二年目だった。グループ秘書から副社長の就任と共に個人秘書に抜擢された。
本来ならば、ベテランの課長クラスが個人秘書を務めるのが今までの習わしだったものの、当時副社長に就任したばかりの甲斐紘也(かいひろや)が『彼女を秘書』にと、言い出したのだ。
わたし自身、分不相応だとは十分理解していた。しかし辞令をはねのけて、仕事を失うようなことはできない事情があった。
わたしの両親は、わたしが大学卒業をする年に、小型飛行機の事故で亡くなった。すでに成人しているとはいえ、突然のことに驚き悲しんだ。
あのときのことを思い出すと、今でも悲しみが身体を駆け巡る。
しかしいつまでも落ち込んでいるわけにはいかなかった。