副社長と秘密の溺愛オフィス
「そんなことっ! 紘也さんはいつもわたしを助けてくれました。わたしが失敗ばかりするから……」

 監禁されたときだって、わたしがもう少し注意していればあんなことにはならなかったし、紘也さんはちゃんと助けに来てくれた。彼が自分を責めるべきではない。

「それでもやっぱり、どんな形でも明日香の傍にいたいし、傍にいて欲しいと思う。俺たちはふたりでひとりなんだ。元に戻った今でも。俺はそう思っている」

――ふたりでひとり。

「だから、この部屋を出ていった理由を聞かせて欲しい。まだ何か気になることがあるんだろう?」

 するどい紘也さんは気がついていたのだ。わたしが彼と別れようと決心した理由が他にもあると。そしてそれは今もわたしの心のなかでわだかまりとして残っていることも。

 でも今なら聞ける。全身で愛を表現してくれているんだから、恐れることなんてなにもない。

「わたし、紘也さんとお母様が副社長室で話をされているのを聞いたんです。わたしたちの結婚が〝間違ってる〟って言っていたのを……」

 紘也さんは何かを考えるような素振りを見せ、思い当たったのか「ああ……あれか」と呟いく。そして、わたしの肩に顔を乗せると……「聞かれてたのか」とため息を交える。
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