副社長と秘密の溺愛オフィス
「嫌だ」

 満面の笑みでそう言った彼は「やった!」と子供の様に喜びながら、わたしを抱き上げたままくるくるとその場で回った。

「きゃあ! もう、ほんと危ないからっ!」

「ダメだ。話したら逃げていくだろ」

「逃げません……だって、わたしの居場所はここだから」

 わたしの言葉にピタッと彼の動きが止まった。ゆっくりとわたしを床の上に降ろしてまっすぐにわたしを見つめた。

「これ、指にはめてみて」

 差し出されたのは、紺色の箱から取り出された指輪だった。入れ替わっていたときに急いで用意したものよりも、シンプルなものだ。

 彼がゆっくりとわたしの指にはめてくれた。

「ぴったりだな。まぁ、この間まで俺の体だったから間違えるわけないんだけど」

 指輪をはめたわたしの左手をみて、彼がうれしそうに笑う。

「どうして紘也さんが笑ってるんですか?」

「だって、やっと俺のモンになったんだ。うれしくてあたりまえだろう。やっぱり買い直してよかった、こっちのほうが明日香によく似合う」

 はっきりと言われて、胸がくすぐったい。

「これから先、何があってもお前は俺の隣で笑っていてくれ。俺がお前に望むことはそれだけだ」

「はい。ずっとそばにいます」

 わたしは自ら彼の胸に飛び込んだ。背中に手を回して自分の居場所を確認した
< 204 / 212 >

この作品をシェア

pagetop