副社長と秘密の溺愛オフィス

「あの、大丈夫ですよね？　すぐに元に戻りますよね？」

　しかしわたしの問いかけに彼は、力なく笑った。

「どうだろうな。俺も初めての経験だからなんとも――」

「やだ……っ」

　不安に押しつぶされそうになり、目に涙が滲む。

　自分の人生にまさか起こるはずのない事態に、なすすべもないなんて……。

「おいおい、俺の姿でめそめそ泣くな」

「……っ、でも、わたし」

「大丈夫だから、落ち着いて」

　社長の〝華奢な〟手が、わたしの〝広い〟背中をさする。

　聞きたかった「大丈夫」が聞けた。その魔法の言葉と背中をなでてくれる副社長の手のおかげでなんとか取り乱さずにいられた。

　深く深呼吸をして――一度ではダメで、二度、三度と繰り返し――わたしはなんとか、副社長と話ができるようになった。

　お互い今の状況を整理しながら、なんとか打開策を一緒に考える。

「わたしたちが、こんな状況になったのは……やっぱりあの交通事故のせいですよね？」

「あぁ、間違いない」

「あの、運転手の田中さんは――」

　自分のことに必死で、一緒に事故にあった運転手の田中さんの状態を今まで確認していなかった。

　そんなわたしを見て、社長が目を丸くする。