副社長と秘密の溺愛オフィス
《それで、紘也のやつはどうした?》

「あいにく今、副社長は診察中でして、わたしが電話を預かっておりました」

《そうか、それなら仕方ない。乾くんも大変だったね、君は大丈夫なのか?》

「えぇ、ご心配かけて申し訳ございません。逞しい副社長が身を呈してわたしを守ってくださいましたので、ほぼ無傷です」

 たしかに見たところ、かすり傷程度だ。

《そうか、紘也がねぇ・・・・・・》

「はい。あんなに男気が溢れる方の下で働けて、わたしは幸せものです」

 自分を賛辞する副社長の言葉。わたしが言っているわけでもないのに、何故か恥ずかしくなってしまう。

《そうか、よかった。わがままで乾くんを困らせているんじゃないかと心配だったんだ。とりあえず様子を聞こうと思っただけだから、また明日にでも連絡する》

「わがままだなんて、とんでもないです。彼は理想の上司ですから。社長からお電話があったこと、お伝えしておきます。では、失礼いたします」

 通話ボタンを押した副社長が「どうだった?」と得意げにこちらを見る。
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