副社長と秘密の溺愛オフィス
「おい、俺の体で内股はやめて……おい、乾」

 副社長は様子がおかしいのに気がついたのか、わたしの肩に手をかけて上を向かせる。

「もしかしてトイレに行きたいのか?」

 わたしはおもいっきり首を振って否定した。

 そうしたところで、どうすることもできないのに、はずかしくて言い出せない。

「嘘つくな。我慢せずに行ってこい」

「でも、あの……」

 そう簡単に言わないでほしい。わたしだって行けるものならさっさと済ませてすっきりしたい。

 けれど体が副社長のものなのだ。となると……。

「あ……」

 わたしが何に戸惑っているのかやっと副社長は理解したようだ。 

 頭の中を覗かれたようで、思わず赤面してしまう。

 急にわたしの手を引っ張って立たせると、スタスタと歩き始めた。

「恥ずかしがってる場合じゃないだろ、ほら目をつむってでもなんでもいいから、済ませろ」

「そんな……」

 涙目のわたしを、トイレのドアを開けて押し込んだ。

「それとも一緒に入って手伝ってやろうか?」

 いくら自分の体ではないといっても、まさかトイレの様子を見られるなんて死んでも嫌だ。
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