副社長と秘密の溺愛オフィス
「小娘に何が出来る?」といわんばかりの、ベテラン秘書の目。

「地味で目立たないあの子が、なぜ?」という、若い女性秘書からの辛辣な態度。

 それに堪え、失敗できないというプレッシャーに押しつぶされそうになっているわたしを救ったのは、他でもない副社長だった。

 今でも心に強く残っている出来事がある。

 それはスケジュールのダブルブッキングを初めてしてしまったときだった。直前になって気がついたわたしは、動転してしまい何もできずにただ青ざめるだけだった。

 皆の言うとおり自分には荷が重すぎる仕事だったのだと落ち込み、なすすべもなかった。

 一生懸命やったところで、結果がこれでは無駄な努力というもの……。

 目の前で立ち尽くすわたしを前にして、副社長はにっこりと笑った。

「乾、やっとミスしたな。これまであまりにも完璧だったから、俺はサイボーグを秘書にしたのかと思ってたよ」

「へ?」

 アポイントの時間まで後一時間。先方の移動時間を考えれば時間がないも同然だった。
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