副社長と秘密の溺愛オフィス
「あなたまさか秘書に手を出しておいて、なんの覚悟もないわけじゃないでしょうね? まさか今までみたいに遊びなわけじゃないでしょうね?」

「え、あ、あの……」

 遊びもなにも、わたしたちの間には実際のところ上司と部下という以外なんの関係もないのに、どうやって答えたらいいんだろう。

 お母様に攻められて冷や汗をかくわたしを、副社長がすかさずフォローしてくれたのだけれど……。

「紘也さん、お母様にきちんとお話しましょう。わたしたちが結婚の約束をしていることを」

「あ、え? 結婚⁉」

 なんで、そんなこと? まったくフォローになってないじゃない!

「そうでしょう! やっぱり。そうだと思ったのよ!」

 副社長の言葉を聞いたお母様は立ち上がって、手を組んで神に感謝をささげている。「神様、紘也にこんなに素敵なお嫁さんをくださってありがとうございます」

「あの――」

「さぁ! 忙しくなるわぁ」

 もうこちらの言葉など一切耳に入らないようだ。

「明日香さん、ウエディングドレスと打ち掛け、どっちがお好み?」

「どっちも、好きです」

 にっこりと笑う副社長に、呆れてものも言えない。
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