副社長と秘密の溺愛オフィス
肩を落としていると、外商の担当の人が焦った様子で下りてきて、わたしの前で深々と頭を下げた。

「甲斐様、大変お待たせいたしました。先ほどは失礼がありましたようで、申し訳ございません」

 わたしのほうでなく、副社長の方へ向いてきちんと頭を下げている。さっきまでイライラしていた副社長も、溜飲を下げたようだ。

 その態度からも、すごく仕事の出来る人だということが分かる。副社長の周りにはこういったプロフェッショナルな人たちばかりなのだろう。

 類は友を呼ぶ。まさにその典型だと思った。

「甲斐様、本日は何をお探しでしょうか?」

「……あ、えーっと彼女の洋服を」

〝甲斐〟と呼ばれ慣れておらず、返事が遅れて隣に立つ副社長がコツンと足を蹴ってきた。

「かしこまりました。ではサロンにご案内いたします」

 奥まったところにあるVIP専用エレベーターに案内される。いつものように副社長の後から歩いてついていく。一般人はほぼ立ち入ることができないエリアだ。わたしも初めてのことで、案内されたサロンをキョロキョロと見回した。

何部屋かあったが一番奥の重厚な扉の部屋に通された。おそらく一番立派な部屋だろう。使われている家具、飾られている絵画やオブジェなどからそれがわかる。

 革張りの高級ソファに案内され、緊張した。
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