副社長と秘密の溺愛オフィス
 ソファに座って、紅茶と一緒に用意されていたケーキをいただく。濃厚ガトーショコラに、たっぷりの生クリームをつけて頬張ると、数日間に起きた目まぐるしい日々の疲れがほんのわずか癒されるようだ。

「はぁ……おいしい」

「よければおかわりお持ちしますよ」

 ニコニコとほほ笑む外商担当の人は、話をしている感じから副社長とは長い付き合いのように思えた。

「いえ、これで結構です。ありがとうございます」 

「左様でございますか。本日はあと、バッグとアクセサリーのご準備をしておりますので、先にご覧になられますか?」

「え? そんなに?」

 彼女が手を差し出したほうに視線をやると、いつの間にか新たな商品が並べられていた。

「はい。お気に召すものがありましたら、おっしゃってください。後ほどご自宅にお届けすることも可能です」

「そ、そんなにたくさんは大丈夫ですから!」

 おそらくどの商品ひとつとっても、わたしのお給料では手の出ないような高級な商品だ。恐れ多い。

「すみません、甲斐様がご家族以外の女性の方に贈り物をするのは久しぶりでしょう。わたくし、つい張り切ってしまいました」

 彼女の言葉に引っかかる。

「久しぶり……でしたか?」

「はい。わたくしの記憶が正しければ三年ほどは女性へのプレゼントのお買い上げはありませんでしたよ。お忘れですか?」

 不審がられてはいけないと思い「そうでしたね」と答えたが、腑に落ちない。

 秘書になって三年間、いくつもの恋の噂があったのに、その誰にもプレゼントをしてこなかったってことだろうか。つき合っていれば誕生日やクリスマス。いろんな記念日にプレゼント渡す機会はいくらでもあっただろう。
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