副社長と秘密の溺愛オフィス
「これ、副社長から頼まれたものです」

 ファイルの束を手渡された。

「ありがとう」

 受け取った後も、彼女は一緒に歩き出し小声で話しかけてくる。

「あの、この間いった合コンの相手覚えてますか?」

「合コン⁉」

 アイツそんなものに参加してたのか。いったいいつの話だ。

「そんなことあったかしら? で、その合コン相手がどうしたの?」

 しれっと話を聞き出そうとすると、ペラペラと情報提供してくれる。明日香が言うとおり、この子は本当に素直でおっちょこちょいなんだろうな。

「四葉商事の方、ほら、眼鏡で背の高い知的な感じの人。あの人がどうしても乾さんの連絡先を聞きたいって言ってるらしくて、教えてもいいですか?」

「ダメだ!――いや、ダメよ。興味ないもの」

「え? あんなにイケメンエリートなのに⁉」

 〝イケメンエリート〟だと? 途端に対抗心がむくむくと大きくなる。

「それってうちの副社長よりも、いい男?」

「え? どうして今副社長の話がでるんですか?」

 きょとんとして首をかしげている。

「いいから、副社長とその四葉商事の男どっちがイケメンだと石丸さんは思う?」

「そりゃ、うちの副社長でしょう」

 そうだろう、そうだろう。内心ほくそ笑む。
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