30センチのきょり
もう1度と願う私と願わない私。
「落ち着いた?」
遥くんの落ち着いた声に顔を上げる。
「うわっ、ぐちゃぐちゃ」
ははっと笑う遥くん。
「遥くんのせいだし」
こんなやりとりもなぜか嬉しかった。
これだけ、なのに。
遥くんと会えたことが何よりも嬉しくて。
「うわーごめんね、服」
制服のシャツがびしょびしょに。
あ、
化粧絶対落ちてる。
あーもうやだ、惨めすぎる。
「別にいいよ、そんなこと」
「ねぇ、化粧落ちてる?」
「うん、すっごいよ、今の顔」
ほらね。
化粧直ししてきたいんですけど。