クールアンドドライ
 「まぁ、奢ってやるから、機嫌直せ。」
そっちから言い出したんだから、当然だ!と思いつつも、社会人なので、お礼を言っておく。
「ありがとう、ございます。」
「で、なにがいいんだ?」
 
 連れて来られたのは、町田デンキ本社の隣の店舗ビルだった。
このビルの、最上階8階は、飲食店が集まっている。
 平日、お昼には少し早い時間という事もあって、どのお店も待たずに入れそうだった。

 どうせなら、高級店に入ってやる!!とも思ったが、面倒くさいので「どこでも良いです。」と言っておいた。

 課長が選んだお店は、とんかつ屋さんだった。ラッキー、とんかつ大好きー!というより、豚肉が好きなんだけど。夏だけど、いや、夏だからこそ。揚げ物!!

 テーブル席につくと、早速メニューをひろげた。
正面の席に座った課長が、「そんなにとんかつ好きか?」と、からかうように言った。
しまった、つい顔が緩んでしまった。
せっかくメガネ掛けたままで来たのに。
「いや、とんかつというより、豚肉が好きなんです。」
なるべく、冷たい感じで答えた。
「ああ、浩人も言ってた、豚肉が好きなんだろうって。」
あっ、そうか、確か、ひろにぃと従兄弟だって言ってたっけ。
「そう言えば、、小学生の頃ってどういう意味ですか?」 
「やっぱり、覚えてないか。滝本があの時のさきちゃんとはなぁ。」
 感慨深そうに、遠くを見つめる課長に、
「だからあの時って何ですか?」
と、聞いてみる。何だか、やけに勿体ぶってるなぁと思っていたが・・
< 11 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop