クールアンドドライ
 日曜日の朝なのに、目覚まし時計がけたたましく鳴り響く。
ああ、面倒くさいと思いつつ起きた。

 出掛ける準備を整え、スマホを確認した。
課長からメッセージが届いていた。
そう言えば、連絡先を交換したんだった。
'10時に来い'と短いメッセージ。
それにしても偉そうだな。

 姉と同じマンションだから、ここから車で10分くらい。
車はないので、バスで行く。

 暑い、この焼け付くような日差しの下を、バス停へと向かう。
 
 バスを降りて、手ぶらで行く訳にはいかないと思い、お土産を買う。
姉の家にお邪魔するときに寄る、ケーキ屋さんで、焼き菓子を購入した。

 課長の部屋は、殆ど片付いているようだった。
まぁ、そりゃ4月に引っ越してきたとしても、もう8月だしねー。何を手伝えっていうんだ?

 「何を手伝えばいいんでしょうか?」
買ってきた手土産を渡し、リビングの入り口辺りで聞いてみた。

 「ああ、あっちの部屋だ。取り敢えず、座れば。」
「いえ、お手伝いに来たんですから、早速片付けましょう。」

 課長は、ため息を吐いてから、「そうだな。」と言って、件の部屋の扉を開けた。
その表情が、少し悲しそうに見えた。
何で?
気のせい?
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