クールアンドドライ
 「わぁ~、すごい。これ全部本ですか?」
「ああ、ここにあるダンボール箱は、全部本だな。」
ダンボール箱は、サイズは小さいが、10箱くらいあった。
私の背よりも高い本棚にも少し本が置かれていた。
課長の指示に従って本棚に収めていく。
自分の好きな作家の本が結構あって、思わず読みたくなってしまう。
小説からビジネス書、写真集まであった。
写真集は、どこかの風景の写真集で、アイドルじゃなかったのが、悔しい。
からかうネタに出来たのに。

 半分以上片付いた頃、昼食にしようという話になった。
どうやら、課長が作ってくれるらしい。
「課長、自炊してるんですか?」普通にきいたら、「いつまで、メガネ掛けてんだ?」と、全く違った返答をされる。

 キッチンのシンクの所に並んで立っていたが、課長がこちらを向くので、向かい合わせになる。
 目があって、動けなくなる。
 
 そっと、伸びてきた手にメガネを取られた。
普段片手でとり外したりしてるから、つるの部分が広がっていて、すぐずれてくるメガネは、簡単に課長の手に収まった。

 「な、何すんですか?」抗議した声は、自分でも驚く程、弱々しかった。

 裸眼で見つめあって、堪らなくなって、思わず目を伏せた。
ヤバい、そう言えば課長って好みの顔だった。

 「何か、ムカつく。」
「えっ?」
「なんか、ムカつくんだよ。お前がずっと俺の前で、メガネ掛けてるのが。」
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