クールアンドドライ
　三課にきて、三週間程経った。
その日、また朝から課長に呼び出されてしまった。
今日もまた、始まった。

　こりゃ～新人は辞めたくなるわ。
そんな事を思いながら、神妙な面持ちを作り、俯きがちに視線を落とす。
これが、一番反省している風に見える。
　
　実家の父親は、よく怒鳴る人だった。
おかげで、怒鳴られることには慣れていた。
　とにかく、怒鳴られている時は、その言葉を聞かないようにすること。
そして、頭の中で相手の悪口を並べていく。
たまに、プッと笑いだしたくなることがあるので、そういう時は、上下の唇を噛みしめる。

　にしても、課長って、声が高いよなぁ、怒鳴ってばかりいるから？もう少し、低い声ならいいのに・・
そんな事をつらつらと考えていたら、
「お前、売り上げ伸ばす気あるのか？」と、普通の声音で言われた。
　普通の声だったから、その言葉を聞いてしまった。
　
　思わず顔を上げる。
目の前の課長を見ると、質問の答えを待っているように見えたから、つい「あります。」と答えた。
　また、怒鳴られると思い、とっさに言い訳をする。
「その、どうしたら、売り上げが伸びるのか、やり方が分かりません。」
そう言ったとたんに、「そんな事自分で考えろ！それも含め、お前の仕事だろーが!!」と、怒鳴られた。
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