クールアンドドライ
 しばらく沈黙が続いたが、徒歩20分程の距離は、車なら5分もかからない。

 アパートの近くまで来たとき、「あっ、飯は?コンビニでもよるか?」と、課長が聞いてきた。

「あっ、うちの近くの定食屋さんに行こうかなぁって思ってたんで、アパートの駐車場でいいですよ。」

 「ここです。」
何故か、課長と夕飯を食べることになった。
アパートの近くで見つけた定食屋さんは、こじんまりとしたお店で、ほとんどが常連さんだ。

 「鯖味噌定食一つと、課長は?」
「えっと、チキン南蛮定食をお願いします。」
私と課長の注文をおえて、向かい合って座っていた。
「ビールは頼まなくていいのか?」
「課長が飲めないのに、自分だけ頼みませんよ。」
「そうか。それくらいの常識はあったんだな。」
「頼みましょうか?課長の前で、グビグビ呑みましょうか?」

 どういうつもりなんだろう?
あんなキスしてきたくせに、普通だ。
普段と態度が変わらない。
なかった事になるのか?え?
なかった事にするつもりか?
なんだか、イラついてきた。

 運ばれてきた定食に、思考が停止した。
お腹が空いてると、イライラしてくる。
まずは、食べよう!
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