クールアンドドライ
認める感情
  12月に入って暫く経った。
街は、クリスマスムードに包まれている。
藤森さんが、吉沢さんを狙いだして半月。
近頃、吉沢さんは、私よりも藤森さんに資料作りを頼むようになった。
良い傾向だ。

 そんな感じの週末、土曜日。
そろそろ、冬物のコートが欲しいと思い、そういえば、去年買ったコートがあったなぁ、と思い出し、久しぶりに実家に帰ることにした。

 実家へは電車で帰る。
少し大きめのトートバッグに、夏服をつめて持ち帰る。

 実家の最寄り駅につくと、実家に電話をした。お母さんが駅まで車で迎えに来てくれる。
歩けない距離ではないが、荷物が多いので親に甘えた。
駅前のロータリーが見えるベンチに座り、迎えの車を待っていた。

 ふと、見ていたスマホから顔を上げたとき、知っている車が見えた。
母のものではない。
 その車は、ロータリーの端に止まり、中から運転していた男性が降りてくる。
予想通りの人物が降りてきて、驚く。
しかし、彼は私に気づく事無く、待ち合わせていた女性の元へ小走りで向かっていった。
 
 女性は、スラッとしたスタイルで、なんだか雰囲気が大人っぽい感じがした。

 彼女は、彼を見るなり駆け寄り、甘えるように腕に絡みつく。
男の方も慣れているのか、まんざらでもないと言った感じで、特に振りほどく事無く
車に向かっていった。
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