クールアンドドライ
 これ以上この話題を続けるのは良くない、何か話題を変えようと、考える。
考えていたら、突っ込まれた。
「気付いたんか?」
そのたった一言に、ひどく動揺した。
気づいたのかって、彼の気持ちってことだよね。
「はい、多分・・」
コーヒーの入ったカップを見つめながら、答えた。

 「ふーん。」
なんだ、その素っ気ない返事は!
とか、おもうけど、課長の方を見ることは出来ない。多分ガン見されている気がするから。
なんとも、居心地が悪い!

 「咲希ちゃん、こっちむけよ。」

 なっ、なっ、なっ、なまえ!
懐かしい呼び方をされて、思わず課長を見てしまった。
 
 課長と目が会った。

 恥ずかしいと思うのに、目を逸らせない。

 ひゃっーーー!!

 固まってたら、課長の腕が伸びてきて、引き寄せられた。

 抱き寄せられた?らしい。
課長の胸板が眼前に迫っている。
取り敢えず、ヤバい、と思い、顔をあげた。
息が苦しかったんだよ。
なんか、香水のいい匂いするし。

 顔をあげて、課長と超至近距離で目が合う。

 ああ、これは・・・

 黙って、目を閉じた。

 優しく合わせてくれた唇に、心が満たされてくのが分かった。
ああ、きっと欲しかったのはコレだ。
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